プライバシー権とは何かプライバシー権とはどのようなものですか。よく聞くことばではあるのですが、詳しく説明してください。プライバシーということばは、日常よく耳にすることばです。携帯電話の履歴を勝手に友達に見られた場合、近隣の背の高いビルから自宅がのぞかれたりした場合、「プライバシー権の侵害」と感じることでしょう。では、プライバシー権とは具体的にはどのような意味なのでしょうか。
ロプライバシーと法わが国ではプライバシーということばそのものを使用した法律は現時点では存在しません。しかし、私たちが人間らしく生活するために欠くことのできない権利プライバシー権として判例等で認められてきたものです最初にプライバシ1権を認めた判決として、東京地裁昭和三九年九月二八日判決・判例時報三八五号一二頁[宴のあと事件]。当初プライバシー権は、「一人でいさせてもらいたいという権利」あるいは「みだりに私生活を公開されない権利」と考えられ、それが害された場合には、侵害した者に対して損害賠償ができるものと考えられてきました。しかし、社会が変化する中で、私事が公開されないように求める場合だけプライバシー権を考えればよいという状況ではなくなってきたのです。現在のような情報化社会では、私生活に関する情報たとえば、病歴、経歴、収入額、税金、年金等が電子データ化され、個人に関する情報が広く流通し、容易に他人の個人情報を知ることができるような状況が生まれる可能性が出てきました。しかし細部にわたる私事が、自分の知らない間に他の人に知られてしまうようでは、他人と話もできません。まるで自分自身は立派な服を着て、素肌を隠していると思っているけれど、他人からは裸に見える「裸の王様」の状態になってしまいます。私たちが自立した人間として周囲の人と友情や愛情、信頼関係を結び、社会関係をつくっていく大前提として、「自分自身の私生活上の情報を自分自身でコントロールすべき」との考えが生まれてきたのです。つまり、私生活上の情報を公開するかどうかを自己が決定することだけでなく、どのように管理されているか、閲覧を求めたり、もし内容に間違いがあれば訂正を求める権利としてプライバシー権を考えるようになってきたわけです。プライバシー権の内容がこのように把握されるようになった原因は、情報化社会という時代の流れのみではありません。憲法にうたわれる「個人の尊厳」の観念、つまり一人ひとりの人間を人間として尊重し、その生活様式や生き方について他人が干渉すべきではないという考え方が定着してきたことも大きな要因と考えられます。実際、プライバシー権の根拠については、憲法1三条の想定する幸福追求権の一つであり、人格権の一つであると考えられています本章Q3参照。ここでも、プライバシーとは、「私生活・私事あるいは個人情報」と考え、プライバシー権は、「自己の情報を自己がコントロールする権利」と考えることとします。