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浮気調査知識

霧の積もりに積もった、夫への恨み辛みの末路

霧の積もりに積もった、夫への恨み辛みの末路

依頼者は60代の主婦、ナツミさん。肌に刻まれたシワとやつれた印象から、実際の年齢よりも上に見え、ぱっと見では70代に見えるほど、彼女の人生は夫に翻弄され続けてきたという。「20代の頃から夫の不倫に悩まされて、苦労してきました。いつか浮気の証拠を掴んで離婚してやろうと、ただそれだけを生き甲斐にしてきました」最初に連絡があった時から、「夫の浮気調査をお願いしたい」とナツミさんは明確に話していた。実はこういったケースは意外に少ない。夫が不倫しているのではないかと疑いを持っていても、まずは相談をしてから調査依頼を決断するのが通常のパターンである。しかし、ナツミさんは始めから調査を依頼しようと、固い決意をやってやって来た。それだけ積もりに積もった壮絶たる感情があったのだろう。私がナツミさんの話を聞きながら、これまで重ねてきた歳月の苦しみや悲しみが伝わってくるようで胸が痛くなった。「これまで夫の不倫が分かっていても、子どものためにと目をつむり、我慢に我慢を重ねてきました。手塩にかけてきた子どもたちも独立し、お金にゆとりができた今こそ、離婚して復讐してやりたい」私は「離婚して復讐してやりたい」という言葉を聞き、それはナツミさんの紛れもない本音であろうと思った。そして、ナツミさん曰く、現在、夫は会社を定年退職し、いわば毎日が日曜日であるはずなのに、未だ女性の影が付きまとうというのだ。「会社を辞めて用事がないはずなのに、夫は何時間か出掛けることがよくあります。女性に会って、また不倫しているに違いありません。早く調査をお願いします」と、即決で依頼が決まった。何年も前からこの日のために準備して、不倫調査のための費用も貯めてきた。ナツミさんの苦渋の思いを晴らすためにも、夫の不倫の証拠を掴むのだと、私と探偵たちは心を一つにして調査を始めることになった。――二カ月の調査の末に判明した事実――常日頃から探偵たちが調査によって目にするのは、真実である。それは、時として依頼者の予想や願望からかけ離れてしまうことがある。連日、探偵たちが夫の素行を調査し、どこの誰と会っているのかも一瞬の隙も無いよう徹底的にマークした。夫はスラリとして背が高く、上品な老紳士風でスポーツマンタイプ。外見からすると、女性にモテてきたのも納得できた。探偵たちは愛人との接触を想定し、夫の外出時には必ず尾行した。調査を始めて二カ月後、夫の身辺に女性の影はなく、ナツミさんが怪しいと話していた、「何時間か出掛けている」のは近所を散歩しているだけであった。女性との接触は、その散歩中にご近所の人たちと挨拶を交わす程度。つまり、ナツミさんが望んでいることと、全く逆の事実が明らかになったのである。それでも真実は真実。現実をきちんと見つめることが大切である。私はナツミさんのまっすぐな気性からして、しっかり受け止めながらも、この段階で完全なる潔白であるとの調査結果を伝えた。するとナツミさんは、よほど悔しかったのだろう。私に八つ当たりのような罵声を浴びせてきたのである。「あなたたち、それでも探偵のプロなの! いい加減な調査でお茶を濁そうなんて、そうはいかないわ! 夫に女がいるのは、分かっているんだから! じゃないと、私が耐え忍んできたこの40年間はどうなるの!」妻は予想の調査結果に、頭の中が混乱しているように見えた。思うような結果が出ずに、その悔しい思いを私たちにぶつけたい気持ちは痛いほどわかる。私は、ナツミさんが気の毒でならず、反論することさえできないでいた。しかし、これで終わりではこちらとしてもすっきりしない。そこで、私は、こんな提案をナツミさんに申し入れた。「しばらくの間、ご主人の様子を見ていただいて、また不倫の疑いが出てきた時に、もう一度調査を入れてはいかがでしょうか?」しかし、ナツミさんにとっては保険のようなもので、すでにこの時から依頼する気満々であった。案の定、数カ月後、再びナツミさんから浮気調査の依頼があった。「私が同窓会で一泊する予定なので、その時を狙って夫は愛人と会うに違いありません。尾行をお願いします」と、今度は不倫する可能性が高い日にちを指定してきた。またある時は、ゴルフだと言って夫が一日出掛けた時の動向を調べてほしいと連絡が入り、急きょ探偵たちが現場に駆け付けた。他にもピンポイントで狙って、探偵たちが張り込み、愛人との接触を待った。だが、その度に結果はシロだった。度重なる緊急の依頼に探偵たちもいささか疲弊していたが、ここでできないとは言えない。こちらが探偵としての意地があった。そして、最初の調査から半年ほど経った頃、ナツミさんが友達と一週間ほど海外旅行に行くので、その期間を狙って浮気をするに違いないと調査を依頼してきた。無駄足に終わることも分かっていたが、依頼者との約束は必ず履行するのが我が社のモットーである。妻のいない間、探偵たちは調査対象者の夫に24時間態勢で密着。すると張り込みから三日目、いつになくおしゃれをして、夫が家を後にしたのである。探偵たちがすかさずその後を追い掛けたところ、なんと銀座の喫茶店で妙齢の婦人と待ち合わせているではないか。ついにその瞬間をキャッチできたか。やがて二人は、銀座のレストランで食事をし、その後、信じられないことだが妻のいない自宅に女性を連れ込んだのである。ご婦人が帰ったのは、翌日の朝だった。探偵たちは、その一部始終をカメラに収めていた。すっかりシロだと思っていた私も、この結末に驚きを通り越し、まだまだ真実を見通せない自分を恥じた。――ナツミさんの選択――後日、私からの連絡を受けて、嬉々として探偵社に訪れたナツミさん。ようやく不倫の証拠を掴めたことで本当に嬉しそうだった。何はともあれ、早速、状況について説明し、映像を見ていただくことになった。大型のモニター画面に現れた夫のおしゃれな恰好に、ナツミさんは「まあ憎ったらしい!」と、叫んで怒りを露にした。ところが問題の女性に親しげに話し掛ける様子や、自宅へ入る瞬間の鮮明な映像を目の当たりにして、ナツミさんの表情は、どこか落胆にも似た様子に変わっていった。私は、夫の不倫がはっきりし現実のものとなったことで、本当は傷ついてしまったのではないかとナツミさんの心を慮った。しかし、証拠映像のすべてを見終わって、ナツミさんが告げたのは……。「……これは、嫁いでいるうちの娘です。私の留守中、時間があったら夫の様子をチェックするよう言っていたんです」と指摘され、私も調査した探偵も言葉もなく呆然とするしかなかった。しばし、相談室は静まり返り、ナツミさんもまた何をどう言っていいのか、言葉を探していたような気がする。そして――「みなさん本当にご苦労様でした。私がわがままで振り回してしまったみたいねえ。岡田さんもありかとう。ごめんなさいね……」これまでまた振り出しに戻ってしまうのか、また文句を言われるのかと、戦々恐々としていた私だったが、ナツミさんの今までの憤慨した表情はやわらぎ、優しい顔になってこう話し出した。「若い頃ならいざ知らず、夫ももう歳ですし、女性関係はどうやら卒業したようね。今回は、そのことがはっきりしただけでも救いよね」あれほど怒りに震え、積もりに積もった恨みを吐き出していたナツミさんも、憑き物が落ちたように心の底から納得したようだった。弊社を後に帰途に就いたナツミさんの後ろ姿を、私はいつまでも見送りながら、これから夫婦仲良く、まだまだ長い余生を充実させていって欲しいと願わずにはいられなかった。