恐怖、ストーカーの正体は……
依頼者は、バツイチ子持ちの30代女性。無電話がかかってきたり、自転車のサドルが傷つけられたり、子どもの三輪車に落書きされたりと、何者かが嫌がらせをしていると警察に届けたが、パトロールを強化するだけで犯人の捜査までは手が回っていない状態だった。そこで、まだ子どもが小さいので、これ以上危害がエスカレートしないよう、調査して犯人を見つけてもらいたいと弊社に依頼してきた。ストーカーの犯行は、依頼者が帰宅すると、公衆電話からあきらかにボイスチェンジャーを使って声を変え、「帰ってきたんだね」と、行動を把握しているような言葉をかけるもの。それがほぼ毎日続き、怖くなった彼女は、当時付き合っていた彼氏に助けを求め、仕事からの帰り道に立ち寄ってもらい、しばらく滞在してもらった。彼氏はストーカーから電話がないことを確認して帰るというパターンだった。ある日、彼氏がいる時、ストーカーからの電話が。彼が出ると切られてしまい、外を見ると怪しい人影が走り去るのを目撃。彼はすぐに追いかけていったが、ストーカーに殴られ、その場にへたり込んでしまった。警察に行こうと依頼者は言ったが、「いや騒ぎを大きくしたくない」と断ってしまったとか。探偵はそうした事情をすべて聞き、ピンとくるものがあった。「この彼が怪しい」そこで、彼氏と一緒に依頼者を自宅まで送っていき、探偵も帰るふりをして、じっと外で張り込んだ。すると、彼氏が依頼者の自宅から出てくるまででき、公衆電話ボックスに入って電話をかけ始めた。同時にもう一人の探偵が彼女の部屋へ入り、電話が鳴っていることを確認。出るように促したところ、公衆電話で彼氏がボイスチェンジャーを使い、探偵に頼んでも無駄だと話している瞬間を聞いた。すぐに彼氏の身柄を確保。まずは近所の喫茶店へ依頼者と彼氏に来てもらい、探偵たちから事実を伝えた。彼氏は「ごめんなさい」と謝罪し、彼女の気を引こうという軽い気持ちだったようだが、だんだんエスカレートしてしまったのだと告白。殴られた事件は、彼氏の友だちがストーカー役に扮した自作自演と判明。依頼者はショックを受け、結局、警察沙汰にはしない代わりに、二度とつきまとわない旨を約束させ、二人は別れた。ストーカーは被害者とどこかで接点があり、必ず何らかのコミュニケーションを交わしています。つまり見ず知らずの人物ではないということです。一度会ったことのある取引先の会社員、自宅営業に来たセールスマン、バス停で顔見知りの学生、信じられないケースではマンションの住み込み管理人がストーカーだったということもありました。ストーカーの心理は複雑なようで、実は単純です。前述の事例のように、好きな女性の「気を引きたい」「もっと接近したい」という思いが強く、そのことを拒まれると一瞬にして豹変し、攻撃的な態度に出てくるのです。まさに子どものわがままのようなもので、「思い通りにいかないなら、いじめるぞ」といったエゴイスティックな意思表示として、大胆な嫌がらせに発展してしまうのでしょう。すると今度は、被害者の不安におののく姿が、ストーカーのサディスティックな欲望を刺激し、またそれが快感となり、どんどんエスカレートしていくのです。こうしたストーカー被害の調査では、探偵も人間の心理を理解する必要があります。被害者の出勤・帰宅に付き添い、周辺にじっと被害者の動向を監視しているような人物はいないか確認します。あるいは友人関係を丹念に調査し、できれば会話内容まで具体的に聞き出すことで、仲良くしている友人でも、怪しいと思われる人物を探り出すことができます。逆にストーカーらしき人物から、特定の女性についての身辺調査を依頼されることもあります。弊社ではその可能性を想定し、調査する相手とどのような関係なのか、目的とした調査なのかをはっきりさせます。結婚を前提としてお付き合いしている彼女の素行を知りたいというのであれば、その関係が真実であるかどうか、周辺の友人・親族への聞き込みを含め調査します。そこで問題なく、依頼者が本当のことを話していると判断できた場合のみ、調査を継続させていただきます。とにかく人間は社会的地位も評価も、人間性を判断する要素にはなり得ません。どんな人で自分自身が特定されない限り、ストーカーになって被害者を精神的に追い詰めていく可能性を秘めています。なぜなら、人間は誰もがジキルとハイドのような、二面性を持っているからです。