話し合いで解決できるなら「示談」を選ぶ
・示談による解決の特色は「示談」というと、まず交通事故を思い浮かべる方が多いことでしょう。人身事故だけでも令和元年中には約38万件(死傷者数約46万件)も起きています。このうち、民事訴訟や調停になるのは5%以下で、後は示談(紛争解決機関のあっせん含む)により解決されています。民事上のトラブルについて、お互いに話し合い、特定の紛争について譲り合って解決するのが示談です。ただ、トラブルの内容によっては、示談の認められないケースもあります。たとえば、不倫の子を生んだ母親に対して、お金を渡す代わりに、認知請求権を放棄させるなどは、示談ができても裁判で否定されかねません。そこで、示談がまとまりそうな時は、弁護士に内容を話して問題がないか聞いてみることをお勧めします。示談の第一の特色は、当事者間にトラブル(紛争)のあることが前提です。これを裁判所の手を借りずに、トラブルとなった当事者の間の話し合いで解決するものです。難しい手続きも不要で、費用も時間も裁判ほどかからない、というメリットがあります。お互いの主張がぶつかり合うのが、トラブルです。裁判では自分の主張を裏付ける証拠や証人が必要となります。示談の第二の特色は、証拠や証人や法律などにとらわれることなく、当事者の自由な話し合いと、譲り合いで、トラブルを解決できることです。お互いに一歩も引かない、という姿勢では、示談による解決は困難です。・示談を成立させるときの注意事項は「示談」という法律用語はありません。示談の法律上の性格は、民法695条の和解に類似した契約であると言われています。和解は、紛争当事者の互譲により、その間の争いを止めることを内容とする約束を取り交わすことです。示談と和解を厳密に区別する考えもありますが、強いて区別する必要も実益もありませんので、同じことと理解してよいでしょう。示談をしたことのある方はご存知でしょうが、必ず示談書の末尾に「本件に関しては、その他のいかなる請求も放棄する」旨の一項が書かれています。これは、いったん示談してしまうと、後で新たな損害が発見された場合でも、示談のやり直しはできないということです。ですから、「本件」とは何であるかをはっきり記載しておかなければなりません。交通事故による人身事故の示談で、後遺症が発生するおそれがある場合には、その旨の記載をしておかないと、示談後に発生した損害の請求は、原則としてできません(予測不可能な場合を除く)。話し合いによって、示談がまとまった場合には、当事者が記名捺印した示談書を作成しておくことが必要です。この示談書を、公証役場で執行認諾文言のある公正証書にしておけば、万一、示談書に書かれた内容が実行されない場合、裁判で判決をもらわずに、強制執行ができます。⭐︎ポイント: 予測不可能な後遺症の場合には、示談のやり直しが認められることがある