和解内容の履行を確保したいときは「訴え提起前の和解」を活用
⭐︎話し合いができたら裁判所で調書にしてもらう和解というのは、民法債権編の中で規定している13の典型的な契約の一つです。和解は、読んで字の如く、(話し合いにより)和やかに(トラブルを)解決することを言います。ちなみに、民法の和解では、「当事者がお互いに譲歩し合って、当事者の間にある紛争をやめることを約束することによって、その効力が生ずる」契約であるとしています(695条)。たとえば、友人が3年前に10万円を借りたという借用書が出てきたとしましょう。その友人に催促すると、「いや、その金は返したはずだ、その時の領収書はなくした、それに、今言われても金もないし…・」と言って返しません。そこで、では5万円を友人が払うことで解決するこれが「和解」契約です。一見、損をしたように思えますが、返済がない場合に比べると5万円は得したことになります。払うと約束したお金を確実に払ってもらえるかどうかは、相手次第です。そこで、和解の内容を簡易裁判所に申し立てて、和解調書を作成してもらいます。和解調書は、確定した判決と同様、債務名義(これによって強制執行できる)となりますので、相手が和解した内容を履行しない場合は、相手の財産に対して強制執行できます。これを訴え提起前の和解または即決和解と言っています。訴え提起前の和解については24ページも参照してください。 和解のやり直しは原則としてできない 和解の申立は、請求の趣旨と原因、紛争の実情を記載して、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申立書を提出して行います。申立が適法であれば、期日を定めて裁判所から呼出しが来ます。和解の内容に問題がなければ、和解条項が調書に記載され、訴え提起前の和解は終了します。和解成立後になって、和解の内容に反する事実が判明した場合、和解が無効になるかどうかは、問題です。原則は、無効を認めると和解の効力を否定することになりますので、原則とて無効にはなりません。 前記の例で言えば、10万円返したという領収書がでてきても、5万円は支払わなければならないということです。ただ、交通事故による傷害を受けた場合の示談(和解)で、示談当時は予想もしえなかった後遺症の発生については、示談が無効になったケースもあります。和解期日に当事者が出頭しないと不調とされる場合がある。