交渉が長引くときは時効に気をつけよう
・示談交渉中でも時効の進行はストップしない時効というのは「法律の抜け穴だ」という人がいます。確かに、500万円の売掛金も1000万円の貸金も、いや大事な不動産も、時効が完成することによって失うわけですから、正義をモットーとする法律の抜け穴に映るのかもしれません。法律の建前は、自分に権利のあることを知りながら、権利の上に眠っている者は救済しないとしています。売掛金も貸金も、損害賠償請求権も、放っておくと時効にかかるのだと覚えておいてください。売掛金の請求について示談交渉をしていれば、権利の上に眠っていることにはならないから、時効は完成しないだろう、と思われる方もいるかもしれません。しかし、民法では着々と進行する時効の完成を予する方法を規定しており、残念ながら示談交渉はこの中に入っておりません。ですから、示談交渉が長引く場合には、時効が完成するのを防ぐ手立てを講じておかなければなりません。図交渉が長引く場合は時効完成猶予の手続きを取る前にも述べましたが、平成29年の民法改正で、消滅時効の制度は、大幅に改正されました。よく知られていた飲み屋の付けは1年で、弁護士や公証人の債権の職務に関する債権は2年で、医師の診療費、工事の設計に関する債権は3年で時効消滅するなどの短期消滅時効が全廃され、債権の消滅時効は、権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年間行使しないと時効によって消滅すると統一されました。ただし、確定判決、または裁判上の和解、調停など確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は10年と、改正前と変わっていないものもあります。また、短期消滅時効がなくなったせいか、請求、差押え、仮差押え、保全処分、承認があった場合には、時効の進行は中断することになっていたのですが、これに代わって、時効完成の猶予および更新制度が設けられました(147条以下)。このように民事時効のうち消の滅時効は、大幅に変わったのですが、取得時効については全く変わっていません。なお、時効については、62ページも参照ください。ポイント時効の中断制度はなくなり、時効完成猶予および更新制度に。