面会交流が認められないケースも
面会交流は非監護親の権利ですが、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と定められており(民法766条1項)、面会交流を認めることが「子どもの福祉」にとって望ましくないと裁判官が判断した場合、審判では認められないこともあります。典型的なものとしては、非監護親による子どもの連れ去りのおそれ、非監護親による子どもへの虐待のおそれ、非監護親の監護親への暴力等、非監護親に酒乱、薬物使用などの問題行為・違法行為が存在する場合などです。判断能力のある子どもが非監護親に対して、明確に恐怖、嫌悪、拒否等の感情を示し、面会交流を拒否している場合にも、否定されることが多いと考えられます。両親間の対立が激しい場合、特に監護親が面会交流に強く反対している場合には、子どもの心身の成長状況などさまざまな事情を考慮します。そのままの状態で面会交流を実施するとかえって悪影響を及ぼす場合には、面会交流が認められない場合があるといえます。とはいえ、親権等の争いのある事案では、両親間で対立があるのが多いと考えられ、常に面会交流が否定されることにはなりません。その他、監護親の監護教育方針に問題があるわけではないのに、その方針に介入し続け、監護親による監護教育に支障が生じ、子どもの精神的安定を害するおそれが強いなどの場合にも、面会交流が否定されることがあります。なお、非監護親による養育費の不払と面会交流の実施とは、性質の異なる問題であり、関連するものとして考えることは原則できません。しかし、非監護親にとって不利な事情になると考えられます。このように、面会交流が裁判所に認められるかどうかは、さまざまな個別事情を総合的に考慮して、子どもにとって面会交流を行うことが本当に適切かどうかという視点から判断されることになるといえます。