「共有財産」は分与の対象
2025/09/05
財産分与の対象となる財産かどうかは、それがどちらかの名義であるかは関係なく、結婚期間中に夫婦で協力して築いた財産であれば、これを「共有財産」と呼びます。結婚してから購入した家や、そこでそろえた家具や家財などが財産分与の対象となることはもちろん、一方の名義になっている不動産、預貯金や株式、自動車、保険金なども含まれます。一方が得る退職金も結婚期間中は相手の協力があって働いて得た給与に対して付加されるお金なので、これも共有財産に当たります。結婚生活によって協力して得た財産を共有財産ととらえると、別居後に得た財産についてはその対象となりません。別居後は夫婦が協力して財産を築いたとはいえないからです。つまり、「財産分与の対象となるのは、夫婦となってから別居するまでに夫婦で協力して形成された財産ですよ、独身時代また別居後にそれぞれが蓄えた財産や相続で取得した財産は財産分与の対象にはなりませんよ」ということです。
財産分与の対象となる財産・ならない財産
2025/09/05
夫婦どちらかの財産は、すべて財産分与の対象となるのでしょうか。財産分与の対象となる財産かどうかについては、それが「共有財産」か「特有財産」かどうかを区別し、考えていく必要があります。・共有財産……婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産・特有財産……結婚前から保有していた財産や婚姻中であっても夫婦で協力して築いた財産とは無関係に得た財産財産分与の対象となるのが共有財産、財産分与の対象とならないのが特有財産です。
財産分与のこと
2025/09/05
財産分与とは、簡単にいえば、夫婦が結婚している間に築いた財産を分けることをいいます。法律では、離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができると規定しています(民法768条、771条)。財産分与は、婚姻中の夫婦の財産を清算する意味合いである「清算的財産分与」、離婚後の生活に困窮するおそれのある配偶者を扶養する意味合いである「扶養的財産分与」、離婚に伴う慰謝料の意味を含める「慰謝料的財産分与」などと大きく三つに分けられます。また、離婚成立前に支払われていない婚姻費用がある場合には、婚姻費用の清算を含めて財産分与が行われることもあります。財産分与請求は、離婚のときから2年経ってしまうと時効にかかって主張できなくなりますので、請求する時期にはくれぐれも気をつけましょう。
お金にまつわること
2025/09/05
離婚の際に、お金にまつわることとして、財産分与・慰謝料・年金分割・婚姻費用・養育費があります。ここでは、財産分与・慰謝料・年金分割・婚姻費用についてくわしく解説し、養育費については、子どもにかかわることですので、「3 子どもにまつわること」で解説することにいたします。
有責配偶者からの離婚請求が認められるケース
2025/09/05
ここまで民法に定められている五つの離婚原因、すなわち、不貞、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、回復の見込みのない強度の精神病、その他婚姻を継続しがたい重大な事由についてそれぞれ内容を確認してきました。たとえば、夫が妻とは別の女性と不貞し、そのことが原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合、妻は夫に対して離婚を求めることができます。では、この場合に、夫から妻に対して離婚を求めることができるでしょうか。離婚原因をつくった側の配偶者のことを「有責配偶者」といいます。訴訟において、有責配偶者からの離婚請求は原則認められません。自分で離婚原因をつくっておきながら離婚を請求するのは都合がよすぎるからです。ただし、以下のような条件がそろった場合には、裁判で離婚が認められるケースもあります。・夫婦の別居が長期間に及んでいる・小さい子どもがいない・離婚によって相手方が精神的、社会的、経済的に厳しい条件に置かれず、離婚後の生活にも相応の配慮があるもっとも、これはあくまでも裁判において有責配偶者から離婚請求を行う場合の要件です。協議離婚や調停離婚の場合には、当事者双方が納得すれば、離婚することが可能です。そこで、有責配偶者が離婚を求める場合には、相手方に納得してもらうために、それ相応の財産分与や慰謝料の支払などの提案をすることもあります。
保護命令申立ての流れと注意点
2025/09/05
保護命令の申立てにあたっては、事前に配偶者暴力相談支援センターか警察に相談、または援助・保護を求めておきましょう。なぜなら、保護命令の申立てがなされると、裁判所が配偶者暴力相談支援センターまたは警察に対し、書面の提出や説明を求めるからです。配偶者暴力相談支援センターは、DV防止法により各都道府県に設置されたもので、施設の名称は各自治体によって異なります。配偶者暴力相談支援センターの職員または警察職員への相談、保護の求め等の事実がない場合には、公証人が認証した宣誓供述書を添付しなければなりません。認証に要する手数料が1万1000円かかることや、公証役場で公証人の予定に合わせて予約をする等、時間も手間もかかることから、配偶者暴力相談支援センターまたは警察へ相談に行くほうが簡便であるといえるでしょう。保護命令の申立ては、①相手方の住所の所在地、②申立人の住所または居所の所在地、③当該申立てに係る配偶者からの暴力・脅迫が行われた地のいずれかを管轄する地方裁判所に申し立てます。保護命令の申立てには、証拠として、戸籍謄本、住民票、暴力に関する証拠(診断書・写真等)、申立人作成の陳述書などが必要です。また、保護命令申立書には、次の事項を記載する必要があります。① 配偶者から身体に対する暴力または生命等に対する脅迫を受けた状況② 配偶者または、同居している交際相手からの暴力または生命等に対する脅迫により、生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいという事情③ 被害者への子の接近禁止命令の申立てをする場合、被害者がその子に関して配偶者及び交際相手と面会することを余儀なくされることを防止するために子への接近禁止命令を発する必要があると認めるに足りる事情④ 被害者の親族等への接近禁止命令の申立てをする場合、被害者がその親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するために親族等への接近禁止命令を発する必要があると認めるに足りる事情⑤ 配偶者暴力相談支援センターの職員または警察職員に対し、①〜④までの事項について相談したり、援助もしくはは保護を求めたことがあれば、次の事項イ 配偶者暴力相談支援センターの職員または警察職員の所属官公署の名称ロ 相談、援助、保護を求めた日時と場所ハ 相談または求めた援助もしくは保護の内容ニ 相談または申立人の求めに対してとられた措置の内容申立人の面接後、通常は約1週間ほどで相手方の意見聴取のため審問期日が設けられます。裁判所は、相手方の言い分もふまえたうえで、証拠に照らして保護命令を発令するかどうかを決めます。保護命令に違反すると刑罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)が科されることから、裁判所は保護命令の発令には慎重です。ですから、確実に保護命令を出してもらうためには、証拠が非常に重要となります。なお、申立ての準備や申立てをしたことが相手方に知られると、相手方がそのときだけ態度を変えたり、逆上することも考えられますので、秘密裏に進めたほうがよいでしょう。また、保護命令の申立書は相手方に送られるので、所在を知られたくないのであれば、相手方とともに生活していた際の住所を記載するなど、気をつけてください。申立てに理由があると認められると、保護命令が発令され、相手方には決定書の送達または相手方が出頭した審問の期日などにおける言渡しがなされ、効力を生じます。裁判所は、保護命令の発令と同時にその内容を、申立人が生活する警察に通知します。その結果、事実上しばらくの間、警察から相手方に対し毎日電話し、実効性が確保された例もあります。なお、申立てを却下する決定が出た場合、裁判所から事前に取下げをすすめる連絡がくることがあります。保護命令の申立てを却下する決定が出ると、相手方に対し、自己の行為がDVではないとの裁判所のお墨付きを与えたと誤解を生じさせ、その後ますます暴力行為がエスカレートする場合があるので、却下が予想される場合には取り下げたほうがよいでしょう。
保護命令は“再犯”に抑止効果あり
2025/09/05
裁判所は保護命令の申立てを受けた後、2週間ほどで発令することが多いようです。ただし、DV防止法の「被害者」は、配偶者からの暴力を受けている人、また、離婚後も暴力を受け続けている人にかぎられ、ここで定める「暴力」には、性的・精神的暴力は含まれません。保護命令を獲得しておくことは、暴力を振るう配偶者を遠ざけるという点では大きな意味をもちますが、残念ながら強制的に遠ざけることはできません。ただし、加害者が保護命令に違反した場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科され、立派な犯罪行為となります。さらに保護命令違反の行為をやめない場合は、警察が逮捕することもあり得ます。ですから、保護命令を獲得しておくこととは一定の抑止力となるのです。
DVから身を守るために
2025/09/05
DVは五つの保護命令によって守られる「暴行・虐待」(ドメスティック・バイオレンス=DV)について近年特に事例が増えていますので、くわしく解説します。「DV」とは、夫婦やパートナーといった親密な間柄において行われる身体的・精神的・性的な暴力などのことです。DVを受けた場合、まず警察や配偶者暴力相談支援センターに連絡をとるなどして身の安全を図り、避難することが大事です。別居しても夫に居場所を突き止められたというような場合にDV防止法(正式名称:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)では裁判所による保護命令を定めています。保護命令には、次の5種類があります。①接近禁止命令6か月間、被害者の身辺に付きまとったり、被害者の住居(同居する住居は除く)や勤務先等の付近をうろつくことを禁止する命令。②退去命令夫婦等が同居している場合で、被害者が同居する住居から引っ越しの準備等のために、加害者に対して、2か月間、住居から出て行くことを命じ、住居付近をうろつくことを禁止する命令。③子への接近禁止命令加害者が子に接近することにより、被害者が加害者に会わざるを得なくなる状況を防ぐために必要があると認められるときに、6か月間、被害者と同居している子の身辺に付きまとったり、住居や学校等その通常いる場所の付近をうろつくことを禁止する命令。④親族等への接近禁止命令加害者が、被害者と密接な関係にある親族等の住居に押しかけて暴れるなど被害者が加害者に会わざるを得なくなる状況を防ぐために必要があると認められるときに、6か月間、その親族等の身辺に付きまとったり、住居(その親族等が加害者と同居する住居は除く)や勤務先等の付近をうろつくことを禁止する命令。⑤電話等禁止命令6か月間、加害者が被害者に対する面会の要求、電話やFAX、メールなど一定の行為を禁止する命令。なお、保護命令の効力期間が終了してしまうと身体的暴力を振るわれるおそれが大きい場合、前回保護命令を求める根拠となった暴力等を原因として、再度の保護命令(接近禁止命令、子への接近禁止命令、親族等への接近禁止命令、電話等禁止命令)の申立てをすることができます。ただし、延長や更新とは違い、新たな事件として審理されますので、再度の申立ての段階で今後の身体的暴力のおそれが大きいことを証明することが必要です。
その他婚姻を継続しがたい重大な事由
2025/09/05
離婚の理由としてもっとも多く挙げられるのは、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」です。何らかの理由で、夫婦が離婚生活を続ける意思をなくしており、一緒の生活に戻る見込みがないなど、夫婦関係が破綻している状態を指します。具体的には、「別居の有無やその期間」「暴行・虐待」「性格の不一致・価値観の相違」「宗教活動」「性的不能・性交渉拒否・性的異常」など、配偶者の親族との現状との不和」「不貞に関する行為」、「それに準ずる」「精神障害」「難病・重度の身体障害」などに該当しないとして裁判所としては決定的な理由にならないとし、いくつかの理由が重なることにより婚姻の継続がむずかしいと裁判所が判断した場合に離婚が認められます。ドメスティック・バイオレンス(DV)という言葉でも知られる暴行・虐待は、身体的な暴力だけでなく、無視や暴言などの精神的な暴力も含まれるようになりました。裁判においても、DVが原因で離婚が認められることがありますが、その際には証拠が必要です。「性格の不一致・価値観の相違」については、単に嗜好が合わない、といっていることが気が置く程度では、離婚の重大な事由として認められることはまずありません。このようなことはどの夫婦にもあることだからです。ですから、性格の不一致に加えて別居期間しているなど、具体的に夫婦関係の回復の見込みがないと判断できる事実が必要となります。「宗教活動」も離婚理由となり得ます。もちろん、信教の自由はあるわけですが、行き過ぎた活動の悪影響によって、家庭生活が維持できなくなったり、子どもの教育に支障をきたすようなことがある場合、婚姻を継続しがたい事由と判断されることがあります。夫婦関係の充足、子どもをつくるためにの性生活は結婚のの大きな要素の一つですから、「性的不能・性交拒否・性的異常」も婚姻を継続しがたい事由に該当します。夫が妻とのセックスを拒否してアダルトビデオばかりを見ているようであればそれも当てはまります。「配偶者の親族との不和」については、たとえば夫(妻)が妻(夫)と自分の親や親族が不和な状況であることを気にすることなく、親や親族に同調し、配偶者がつらい状況に置かれ、それを放置した場合に離婚請求が認められることがあります。「不貞に関する行為」については、「不貞」にあたる性的関係には至らないまでも、配偶者以外の異性との関係が原因となって結婚生活が破綻した場合には、離婚請求が認められる場合があります。「回復の見込みのない強度の精神病に該当しない精神障害」については、神経症(ノイローゼ)、アルコール中毒、薬物中毒などがその対象となります。「難病・重度の身体障害」とともに、やはりこれらを理由に結婚生活の回復の見込みがないことが条件となります。暴力・虐待を受けている証拠例・医師の診断書・ケガの写真、器物破損の写真・暴言の録音・警察や配偶者暴力相談支援センターなどに連絡をとる(相談記録を残す)など(性格の不一致・価値観の相違など)夫婦関係が破綻していることを証明する証拠例・夫婦げんかの録音、日記やメモに記録・メールや手紙のやり取り・第三者への報告・親族や知人への証言など 宗教活動が婚姻関係に悪影響を与えている証拠例・宗教活動の実態を日記やメモに記録・寄付金額や活動費の確認(通帳等のコピー等)など性的不能・異常、性行為拒否などの性交渉に関する事実を証明する証拠例・夫婦の会話の録音、日記やメモに記録・メールやSNSなどでのやり取りを保存など
回復の見込みのない強度の精神病
2025/09/05
「回復の見込みのない強度の精神病」とは、夫婦間での協力を助け合いの義務を十分に果たせないほどの精神障害をいい、仮に家庭に復帰した場合でも、夫・妻としての責任に耐えられるかどうか問われます。それまでに一方の配偶者が献身的に介護回復の努力をしてきたか、そうした側の今後の療養、生活のめどが立っているかなど裁判ではさまざまな要素を考慮して判断されます。重篤な精神病を患っている証拠例・医師の診断書・入院・通院記録・献身的に介護してきた、病気の回復に尽力してきたことを証明する日記やメモ・親族や知人、第三者の証言など
年以上の生死不明
2025/09/05
お互いが協力し合い、助け合うべき夫婦のどちらかが3年以上、生死がわからない状況にあるということは、夫婦関係はすでに破綻したものと考えられます。失踪や家出のほか、災害や事故にあって生死が不明になった場合など、不明になった間に当人がなくす直接の原因となります。配偶者の生死不明が7年以上続いた場合、失踪者の申立てをすることで婚姻関係を解消することができます。配偶者は死亡したことになるので、「死に別れ」ということになり、残された一方は再婚することも可能です。ただし、失踪宣告後に生存が明らかになった場合、失踪宣告は取り消しになります。その場合、再婚していると重婚の状態になってしまいますので、配偶者の生死が不明の場合は、離婚訴訟を選択するほうがよいでしょう。相手方の生死が3年以上わからないことを証明する証拠例・捜索願受理証明書・最後に受け取った手紙・ハガキ(消印がわかるもの)・最後の接触時の通話やメールの履歴、クレジットカード利用明細書など
履歴
2025/09/05
・交通機関のICカードの履歴・(不貞をしていることがわかる)携帯電話やパソコンに保存されている画像・不貞を疑わせるもの(車の中に自分のものではないアクセサリーがある等)の写真・クレジットカードの利用明細書や領収書(明らかに本人のものではないとわかる買い物)・携帯電話の料金明細書(急に利用料金が増えた)・ガソリン給油の利用明細書(急に利用料金が増えた)・ラブホテルの割引チケットなど同居していないことがわかる証拠(同居義務違反) 例・一方的に出て行ったことを示す手紙やメモ・別居していることがわかる住民票や賃貸借契約書・同居を拒否している会話を録音したものなど生活費が渡されていない証拠、収入の大半をギャンブルや趣味につぎ込んでいる証拠(協力義務違反、収入) 例・源泉徴収票、給与明細書・預貯金通帳のコピー(多額の引出し)・クレジットカード利用明細書・消費者金融の利用明細書・購入したもの(贅沢品など)の写真・ギャンブル中や趣味活動中の写真や映像・家計簿など家事・育児を放棄している(協力しない)状況がわかる証拠(扶助義務違反) 例・生活状況がわかる写真や映像、日記やメモ・親族や知人、第三者の証言など