第3位:教師と保護者
2025/09/05
不倫の実態を証拠づきで冷徹に突き止めるのが探偵の仕事だが、何も当事者に不幸になって欲しいとは思っていない。できれば、真実を知ることが、やり直しのきっかけになって欲しいと願っている。しかし、結果が癒しきれないほど深い傷を残し、修復を望むべくもない調査結果をもたらすことも少なくない。教師と教え子の保護者との不倫も、調査数でいえば、かなりの数に及ぶが、結果は悲劇そのものである。まず発覚した時点で学校やPTAの大問題として糾弾され、私学であれば即刻教師はクビ。不倫してしまった保護者の子女も、自主退学し転校を余儀なくされることが多い。こうした社会制裁が重い場合、離婚を回避することはまずかなわない。しかし、最も心に深い傷を負っているのは、不倫当事者に振り回される子どもたちだ。普段は世の中に迷惑をかけないようにと道徳を説く教師からばっさり裏切られ、親の肉欲の果ての不倫も、受け入れがたいショッキングな事実である。教師と親から二重に裏切られた気持ちはいかばかりであろうか。
第1位:警察官
2025/09/05
難儀な不倫調査、実は上には上があり、探偵たちが異口同音にあげた第1位は、警察官の不倫案件だ。現役の警察官の不倫案件は、とても困る。奥さんからの調査依頼は警察官の妻だけに、調査を頼むことにそれほど抵抗を抱かないからのだろうか、頻度は高い。警察官の不倫相手は、同じ署内の女性警察官であることが多い。これは警官の危機管理意識の表れと言えよう。不倫相手が同じ警察官であれば揉めたとしても、世間に知られることはまずない。警察内部で処理され、あたかも不倫問題などなかったかのように解決される。もちろん本人たちへのペナルティはあるだろうが……。「警察官、夜のパトロールは情熱派!?」「不倫警官ひらきなおり、浮気して何が悪い!」など、女性雑誌や週刊誌のネタになりかねない危うさを持っている。それもこれも社会の模範となるべき警察官だからこそ、高い倫理観を求められているのだろう。しかし警察官でも人間である。不倫と分かっていても、欲望に負けてしまうのを批判することはできない。ともあれ、警察官の調査は苦労続きだ。なにしろ国家権力を持っているもので、何かあれば職質の上、別件逮捕で拘束される可能性(いまだそうしたことはないが)もゼロではない。しかも尾行は、さすが警察官、すぐにバレてしまう。探偵同様、周囲に目配りをかかす隙が無いのだ。調査を少しでも進展させるには、ここでも依頼者である妻の協力が必要不可欠と言える。まず不倫相手の女性警察官の情報をひそかに集めてもらい、ターゲットをしぼって調査するのだが、若い女性警察官であればプライベートで心の隙をつくことが可能だ。しかし、ここまでたどり着くには、通常の不倫調査の何倍も労力がかかり、探偵もずっと神経を張り詰めた状態を維持しなくてはならないので、難儀する不倫調査の不動の第一位と言えるだろう。
第2位:同業の探偵が不倫
2025/09/05
妻の立場としては、夫と同じ職業の探偵に頼みたくないという思いもあるだろうが、探偵に任せれば、明確な証拠を掴んでくれる実力のほども理解している。調査のやり方も熟知しており、こちら側の知りたい事前情報に関しても、かゆいところに手が届くように明快に提供してくれるやりやすさはある。しかし、調査対象はこちらと同じ探偵である。尾行、張り込みはすぐにバレてしまうし、周辺関係者への聞き込みも探偵関係ばかりで、接触することすらできないのが実状だ。だが、不倫夫が探偵であり依頼があれば出動しなければならない。こうした場合はあらゆる修羅場を経験してきたベテラン探偵が担当し、調査対象者である探偵の上を行く調査をするようにしている。とは言っても難しい調査に変わりはない。
第3位:調査対象が双子
2025/09/05
探偵が不倫調査に着手した途端、混乱してしまうその際たる例が、不倫相手が双子のどちらかという場合。しかも、双子同士でルームシェアをしており同じ部屋から出てきた時に、ぱっと見分けるのは、眼力の鋭い探偵でも至難の業。ならば服の好みやブランドの違いで見分けようとしても、大体、こうした場合は服やバッグなどもシェアしているため、より判別が難しくなってしまう。こうした難しい状況を解決するには、まず双子のA・Bそれぞれに探偵をつける二班体制で調査を開始。もうこの時点で、時間も経費も二倍かかってしまうのが難点だ。経費を最小限に抑えた場合は、知恵をしぼるしかない。そこで気づいたのが携帯電話。今ではスマホをどんな時にも触っているので、スマホケースのデザインや色の違い、つけているアクセサリーなどで特定する。とにかく調査対象者が双子だった場合はかなり要注意。
探偵たちを困らせる不倫調査
2025/09/05
どんなピンチに陥っても冷静に対処できてこそ、それまで培った探偵の能力を発揮できるわけですが、中には有能な探偵でも、いかんともしがたい案件が舞い込むことがあります。特に不倫はどんな職業でも、はまってしまう人ははまってしまいます。さて、探偵たちが頭を抱えてしまう不倫案件とは?
愛人は妻よりブスが多い
2025/09/05
「浮気された妻=サレ妻」を主人公にしたドラマが、話題となっていた時期がある。サスペンスドラマの中でも、浮気・不倫は、ストーリーを構成する定番の要素だ。芸能人や有名人の不倫スキャンダルは、一度発覚するとしばらくワイドショーをにぎわすのも、お馴染みの光景だ。それだけ不倫に対する、世の中の関心が高くなっているということなのだろう。フィクションの世界では、確かに絶世の美女との不倫は、魅力的で官能的ではあるものの、それはあくまで妄想の世界でしかない。夫が不倫している場合、不倫相手の容姿が妻より優れているから、夫を籠絡できたのだと思いがちだが、実はここが現実とまるっきり逆のケースが多い。探偵たちへの聞き取り調査では、弊社に依頼に来る八割が、奥さんより容姿が劣る女性と夫が不倫をしているというのだ。これはいったい何故なのか。全社を挙げてあらゆるデータ、アンケート調査、ヒアリングを重ねた結果、そこからは驚きの事実を導き出すことができた。言葉は悪いがブスな不倫相手は、ブスゆえに男性に好かれた経験が少なく、既婚者であっても深い関係になった相手に対して、心から全力で尽くすという。不倫に走る夫は、前にも書いたように、妻に物足りなさを感じていたり虐げられていたり、常日頃から不満を抱いている。そんな夫に、至れり尽くせりで接する女性は、たとえブスであろうとも、情が移ってしまうのは否めない。もちろん夜の営みの方もサービス満点だとか。例えば、こんな事例もある。不倫夫の調査案件で尾行していたところ、夫が満員電車に乗り、探偵も見失わないようすし詰めの乗客を押しのけ中へ。人と人が接触する狭い隙間から夫の行動を見張っていたところ、なんと夫が、目の前に立っている女性のお尻を、むんずと掴んで触りまくっている光景を目の当たりにしたのだ。しかも女性は、怖かったのか、ただ黙って耐えているようだった。「これは痴漢だ!」と、尾行中のこの探偵は駅員に知らせようと、その瞬間の映像を小型カメラで撮影。その矢先、夫は次の駅で降りるや否や走り始めた。探偵も駅員に報告する暇もなく、本能的に全力で追いかけた。すると夫は一人でラブホテルへ。ここが密会場所なのは一目瞭然。不倫男女がラブホテルを利用する場合、別々に入るという定石通りの展開になってきた。探偵は入口近くで見張っていたが、ものの数分も経たないうちに、不倫相手と思しき女性がやってきた。うつむき加減で歩いて来るその女性の姿形、そして顔を見て探偵は驚いた。電車の中でお尻を激しく揉みしだかれていた、あの女性だったのある。なんという待ち合わせ方法。それにしても密会の前に「痴漢プレイ」もやってのけるとは……。この時の不倫相手の女性は、とことん男の望に応えるブスであった。ただし気を付けなければならないのは、こうした女性は次の相手が見つかりにくいので「今カレ」に固執しすぎるところである。仮に不倫関係を解消しても、その後の愛人の動きを気にして見ていないと、不倫夫に何度もアプローチし、その度に不倫夫の心もグラグラ揺れ、愛を放っておけないことになりかねない。そうした状況を放置しておくと、夫婦関係が破綻することに繋がる。美女ならば男性にモテるからこそ、一人の男性に固執することはなく、間違いで既婚者と不倫関係になったとしても切り替えが可能なのかもしれない。不倫調査の結果報告を依頼者である妻にすると、映像や写真をじっくり見て、あまりにブスな不倫相手にほっと胸をなでおろすが、そのあと必ず、「なんで私より、こんなブスがいいの?」と不満たらたらのリアクションを見せるのだ。ブスだから安心と思うより、ブスだからこそ、この不倫は危険と思って注意したほうがリスクを回避できることは言うまでもない。
不倫する人の環境と特徴
2025/09/05
不倫と浮気の違いについて、探偵たちはよく話題にしている。その中で大体一致する結論は、「浮気=遊び」「不倫=配偶者以外に対して恋愛感情ありきの欲望」となるようだ。確かに浮気は風俗店に通っても浮気であるが、特定の女性と長期にわたって交際するというものではない。それに対して不倫は、特定の女性とわりと長いスパンでお付き合いし、下手をすれば〝生きるの死ぬの〟と、ちょっと古いが「失楽園」状態の泥沼に陥りやすい。簡単に言えば「浮気」は、ちょっとした出来心なので、奥さんに頭を下げれば解決するが、「不倫」は事実が発覚しても愛情が強いと難しい場合もあり、結局、離婚に向けての話し合いとなっていく。こうした既婚者と不倫関係にある女性のことは、一般的には「愛人」と呼ばれているが、かつては「お妾さん」という言葉も使われていた。お妾さんは、本妻さん公認の存在で、毎月のお手当を貰い生活していた。テレビドラマや時代劇などで、そんなお妾さんが登場することがある。だからなのか、特定の女性と不倫関係にある男性は、経済的に余裕のある富裕層に属し、会社経営者や医者などが多いと思う向きがある。しかし、実態はそうでもない。むしろ、お金持ちの方は、派手に遊んだり浮気をしたりすることはあっても、特定の愛人を持つケースは、今やほとんど稀である。なぜなら、企業経営者にとって、愛人スキャンダルが発覚しようものなら、一発で社会的に抹殺されかねないコンプライアンス重視の時代となっているからだ。しかも、今はSNSもある。リベンジポルノという言葉も浸透しているとおり、愛人とのSEX写真を公開でもされたら、大変なことになってしまう。ましてや有名人や知名度の高い企業の経営者だったりした時には、ワイドショーの餌食になってしまうのがオチである。だからなのか特定の愛人と不倫関係に陥るのは、実は富裕層の男性ではなく、ごく普通の平凡なサラリーマンが少なくない。これは働く既婚女性にも言えることだ。その理としてあげられるのが、社内不倫性と親しくなれる環境が整い過ぎているという点だ。上司と部下、同期入社の同僚、あるいは取引先の社員……などなど、業務を通していつでも異性と知り合うことができる上、仕事の苦労を分かち合ったり、悩みや分からないことを相談したり、とにかく心と心が繋げる要素が盛り沢山なのである。こうした典型的な社内不倫の調査は、一見、簡単そうに思えるが探偵たちの答えはノー。その一例として探偵が挙げてくれたのは、ある有名IT会社の社員同士による不倫だった。調査を依頼したのは、その会社に勤める男性の妻。夫は38歳で妻は年上の43歳。なんと夫は、年上好きの甘えん坊体質なのか、同じ会社の40代独身女性である直属の上司と不倫関係に陥っているという。帰宅も遅く、連絡のない外泊も多い。夫婦のコミュニケーションは限りなくゼロに近く、夫はもはや妻を顧みなくなっていた。「これは私にとって、殺人級の裏切りです。二人を無茶苦茶にしてやります!」と、妻は夫よりも5年上の不倫相手に怒り心頭の様子だった。そんな証拠を掴むのは簡単だったが、問題はそのあとだった。なんと妻が夫の会社に乗り込んで、夫と女性上司の不倫を証拠写真とともに、その上席の上司、強いては執行役員などにも回覧の上、話し合うことになった。妻は社内でも騒ぎしたため、女性上司が謝って別れるものと思っていたが、彼女は社の幹部を目の前にしても、一切動じることなくこう言い放った。「私はキャリアなんていりません。処分はどうぞお好きなように。私はクビになっても好きな男性と一緒にいられるのが一番幸せですから」と、強気な不倫相手に揉めに揉め、結局、依頼者である妻と夫は離婚。不倫相手である女性上司の完全勝利……かと思いきや、夫が既婚者だった頃は、障害があるからこそ盛り上がっているにすぎず、その後、元夫と女性上司は「こんなはずじゃなかった」と別れてしまったという。失うもののほうか多く、誰も幸せにならないのが、典型的な社内不倫なのかもしれない。
探偵が分析する超現実的な不倫
2025/09/05
日からたくさんの不倫の現場に触れてきた探偵たちは、その経験則から浮気する夫婦関係には共通点があると 感じています。どういったものか、今回、この本を読んでいる読者の方の中には、不倫問題で悩んでいたり、あるいは不倫の当事者だったりすると思いますので、参考になればとまとめてみました。①妻がうるさい(優しい愛人のほうが居心地が良いので、夫はなびいてしまう)②夫が妻を細かく管理する(妻に不平不満が蓄積し、他の男性に走るきっかけに)③実の親とやたら仲がいい(配偶者が疎外感を感じて、寂しさから不倫を誘発)④夫婦の会話がない(妻または夫に関心がなくなっているサイン) ⑤妻または夫どちらにも隠し事がある(秘密を持つと、不倫への抵抗感が薄れる)⑥SEXレス(実はこれが一番、不倫の要因に。夫婦間で満たされない欲求を別の異性に求めることに……)こう書き連ねると、確かにそうだろうなと納得してしまいませんか? わずかでも、そうだと感じられる夫婦ならば、ほんのささいなきっかけで、不倫する可能性があると断言できます。つまり、どんな夫婦でも不倫という背徳感がもたらす、甘い妄想を心の片隅に抱いているのです。お気を付けください。では探偵たちが見てきた不倫にまつわる人間模様の具体例をお話ししましょう。
張り込み調査の実状
2025/09/05
忍耐力勝負の張り込みも探偵の大きな仕事の一つだ。特に不倫調査では、事前に愛人の自宅が割れている時など、いつ不倫相手の依頼者の夫がやってくるかもしれず、じっと自宅前で張り込むこともよくある。これが連日続くと思うとうんざりするが、そこはよくしたもので、調査対象の愛人が仕事をして いれば、その間は一旦仕切り直しとなり、一息つくことができるのだ。その点、どこへ向かっていくのかわからない尾行に比べると、精神的には楽な部分もある。ただし集中力と体力がなければ続かない。不倫をしている人たち……特に男女それぞれ配偶者のいるダブル不倫の場合は、密会はとても慎重に行われるのが常だ。その場所となるのは、ご多分に漏れずラブホテル。こっそり肩寄せ合って入るのだが、そこが撮影のポイントとなるので、尾行していてラブホテルのネオンが見えてきたら、すぐにビデオカメラをスタンバイするのが、デキる探偵のノウハウでもある。中には調査対象者である夫を尾行していたら、一人でラブホテルに入ってしまったということもあるが、この場合は不倫相手と時間差でそれぞれ別々に入る手法を用いているのだ。しかし、この場合、対象者である夫がラブホテルに入っただけで、不倫の確たる証拠にはならない。「徹夜明けだったので、一眠りしようと思って手っ取り早くラブホテルに入った」と言えば、限りなくグレーではあるが黒とは言えない。そこで尾行していた探偵は、調査方法を張り込みに変更し、ホテルの入口が良く見えて、長時間の車中での待機していても怪しまれない場所に陣取る。大抵のカップルの場合、不思議なことに入る時は別々でも、出る時は辺りを気にしつつも一緒のことが多い。情熱的なひとときを過ごし、どこか離れがたい気持ちになって、ついそうなってしまうのだろうか。ともあれ、張り込みをする探偵にとっては、一緒に出てくる、その瞬間が調査のキモである。絶対に逃すわけにはいかない。ところが、この日、探偵が例のごとくラブホテルの前で張り込んでいると、どうも周囲の雰囲気がおかしいのだ。弊社MRの探偵以外に、このホテルを見張っているような車両が数台、停まっている。しかも、その内の一台には、いかつい男たちが何人か乗り込んで、ホテルの気配をじっと窺っているようなのだ。ホテルのドアが開く度に、探偵の面々も、そしてやはり見張っている車両の男たちも、瞬時に玄関に視線を向け、緊張が走る。「これは他の興信所の探偵じゃないか?」「確かにラブホテルだから、かち合ってこともあるな」と、探偵たちは話していたが、それにしてもどうも探偵の雰囲気とは違う。「では、一体何者……?」など、つらつら考えているうち、調査対象者である夫が、愛人の肩を抱いて、辺りを警戒するように出てきたのである。探偵たちは、すぐさま撮影の体制になりカメラを回し始めた……その時だった。夫と愛人の前に、駐車していた車の中から、脱兎のごとく飛び出してきた人影が、やおら立ちふさがったのである。「あなた! この女、なんなのよ!」探偵たちは色めきだった。なぜなら、二人の前に現れたのは調査を依頼した妻本人だったのである。愛人との密会の現場を押さえようと、張り込んでいると連絡していたのだが、それを聞いて居ても立ってもいられなくなってしまったのだろう。まさか、現場に来るとは……。妻は物凄い剣幕で怒っているものの、愛人は開き直って不敵な態度で依頼者を挑発する。「あなたが相手してあげないのがいけないんじゃない……」と、そこまで言いかけた時、愛人の顔が凍りつく。なんと、今度は愛人の旦那と思しき人物が、拳を固く握りしめて近づいていく。やはり、この旦那も妻から見張っていたようだ。夫と愛人の夫、愛人と依頼者、強烈な四人の男女の修羅場がホテルの前に出現してしまった。もちろんホテルの従業員の制止など聞かない。探偵はどうしていいのか、もはやパニック状態。これもある種の証拠になるだろうとビデオカメラを回し続けてはいたが……。すると、今度は例のいかつい男性四人が車両から降り、彼らを取り囲んだ。「今、捜査中なんだ! 邪魔しないでくれ!」と言って、速やかに移動するよう四人に促す。どうやら私服警官らしい。その時、ホテルの自動ドアが開いて、髭面の男がでてきたのだが、私服警官を見て「あっ!」と声を上げ、女をほったらかしにして逃げ出してしまった。私服警官たちは、「待てーっ!」と叫びながら後を追いかけた。なんとホテルから出てきた男は指名手配犯で、私服警官たちはこのホテルに追い詰めていたのだった。無事、犯人は警官たちの格闘の末、捕まえられたのだが、刑事ドラマさながらの出来事を目の当たりにし、きょとんとしていた四人の男女は、呆然と立ち尽くすしかなかった。呆気にとられている今こそ出番だと、探偵がようやく仲裁に入り、後日、四人で話し合いの場を持つということで、それぞれ帰宅の途についたのである。ちなみに今回の夫婦、ここまで修羅場を演じたにもかかわらず、元のさやに戻り円満な生活を続けている。愛人は一連の大騒ぎで余程恐怖を感じたのか、あの事件の日以来、夫に一切、連絡をよこさなくなったという。それにしても探偵人生で一度あるかどうかの、貴重な体験となった。弊社の調査によると、不倫の密会の場として利用されているのは、ラブホテルがトップ。また、比較的安価な金額のビジネスホテルも、地方や宿泊を伴った逢瀬の場合に使用される頻度が高いようです。意外なのは、不倫相手の自宅。当然ですが相手が独身である場合に限ります。探偵の間では、これを「自宅不倫」、略して「宅倫」と呼んでいます。数字的には少ないものの、車内や会社の休憩室、あるいは倉庫など、経費のかからない場所で情事に及ぶケースもあります。こうした場所での不貞行為は、誰かに見られるかもしれないスリルを感じながら興奮したいという、一種のプレイに近く、他のホテルなどと併用して楽しんでいるようです。
ハプニングだらけの不倫調査
2025/09/05
前に書いたように不倫調査は、男と女の感情の坩堝です。この感情というのは、とても厄介なもので、真面目に任務を遂行する探偵を毎回悩ます要因となっています。順調に調査が進んでいても、思いがけない事態が生じることも多々あります。私たちプロからすれば、これまで数多くの案件を担当して、豊富なノウハウが蓄積されていますので、どんなハプニングが起きても、的確かつ即座に対応できます。むしろ、逆にハプニングの中にこそ、不倫の原因を解き明かすヒントが隠されていると考えるようにしています。さて、そんな男女の感情が露となって激しくぶつかりあう、不倫調査ならではのハプニングとは、一体どんなものなのでしょうか。
尾行の現実と探偵の忍耐力
2025/09/05
探偵にとって最も集中力やモチベーションを奪うのが、いつ終わるのかまったく予想できない長時間に及ぶ尾行調査。その中でも女性のウィンドウショッピングに遭遇すると最悪だ。例えば、対象者の人妻を追いかけデパートに向かうと、探偵の誰もが嫌な予感に身震いする。まず女性のショッピング尾行は、デパートの上から下へダラダラと商品を見比べながら移動し、同じフロアでも延々と行ったり来たりの繰り返しだ。そろそろ終わりかと思えば、また最初からグルグルと回りだす。これが二、三時間続くのだが、探偵はどこで不倫相手と会うのか分からないため、少しも気をぬけない。変にべったり尾行していると店員に怪しまれる。特に婦人物の下着売り場などは、男性探偵にとってまさに鬼門だ。「お客様、奥様へのプレゼントですか?」あきらかに変態ではないかと怪しむ店員から、声をかけられることもある。それでも尾行をやめるわけにはいかず、こうした場合は女性探偵に交代することもある。買い物の尾行だけで事が終わるのならまだ良いが、時に全く予想せず二泊三日の長丁場の調査になり、最終的には北海道の最北端まで行ってしまうこともあった。国内ならまだ探偵自身の裁量で、一旦会社に戻ろうとか、レンタカーを借りようとか判断できるが、そう都合よくいかないのが海外まで尾行してしまった場合である。調査対象者は不倫疑惑にまみれた男性。妻からの依頼だった。すでに数日ほど追跡調査を行っていたのだが、まったく証拠を掴めない。依頼者である妻もある日、「明日から一週間、急に出張すると言うのです。どこに行くのか分かりませんが、どうも怪しくって……」と、妻からの情報を得た探偵は、愛人との逢瀬を楽しむとしているかもしれないと、大張り切りで張り込みから追尾の態勢をとった。案の定、夫は朝早くスーツケースを片手に自宅を出て、羽田空港に向かったのである。まずはどこまで行くか。ここからどこへ向かうのだろうか。北海道か、それとも沖縄か。探偵はどこに行っても対応できるよう、事前に各航空会社のオンライン・チケットの会員となっているので、行先が分かり次第、航空券を購入できるようになっていた。心配なのは空席が無い場合なのだが、行先さえわかれば、その前の便を確保して空港で待っていればいいし、他の航空会社の便でも、とりあえず現地に向かえばなんとかなるはず。しかし、見通しは甘かった。調査対象者である夫が向かったのは、なんと国際線ターミナル。ここで探偵はおおいに焦った。パスポートは常備しているが、要は航空券である。目的が判明したとして、すぐに買えるものなのか?答えはもちろん「買える」であるが、ただし出発当日の航空券は、すでに完売している場合が多く、空席があれば、という条件つきである。つまり問題の夫と同じ飛行機に乗れるかは運次第だった。ここまで乗り遅れては、シャレにならない。夫が乗る飛行機と行先を確認し、同じ便なんとか乗れるよう航空会社と交渉。航空会社が直前のキャンセルや、乗客が来ない場合を想定して、オーバーブッキングしているのは常識である。予想通り空席はゼロ。ただし出発直前まで待てば、キャンセル待ちの席が出てくるかもしれない。勝負は出発の二時間前まで。この時点で席が確保できなければ、あきらめざるを得ず、別の手段を考えなくてはならない。祈るような気持ちで結果を待っていたところ、eチケットが確保できたと連絡が届いたのである。「やはり普段の行いを正しくしていれば、神様はちゃんと見ていて下さるのだ」クリスチャンの彼は、本当に天を見上げて神に感謝を捧げたのであった。調査対象者である夫が向かったのは、インドネシアのバリ島。日本人に人気のビーチ・リゾートだ。羽田空港では愛人の影はまったくなく、もしかしたら、現地で合流か?ビジネス・クラスで優雅に移動する夫をにらみ、エコノミー・クラスの探偵は、これからの段取りをいろいろ考えていた。バリの空港に着くと、予想通り愛人と思われる女性が、彼を迎えにきていた。つまり愛人が先に来て、後で夫と落ち合う計画だったのだろう。探偵は、早速、小型のビデオカメラで撮影をはじめ、ホテルでいちゃつき同じ部屋に入るシーンもばっちり収めることができた。すべての苦労が報われ、気が付けばほぼ三日間、調査を続行。本社に連絡した後、気絶するように丸一日爆睡した。以上は、弊社の探偵たちから取材した事例ですが、不倫調査は忍耐と根性が必要であることを分かっていただけたのではないでしょうか。ある程度、不倫相手の住所や仕事、生活リズムなどが、事前に分かっていれば、それほど苦労はないのですが、そこまで具体的な情報を掴んでいない場合は相当苦労してしまいます。では苦労して調査する探偵は、一つの不倫案件にどの程度の時間を費やすのでしょう?当社のデータを集めたところ、次のような結果となりました。調査期間が長期になればなるほど費用もかさむので、探偵たちは徹夜続きになっても、短期間で結果を出せるよう日夜頑張っています。だから「二、三日で済む場合は一見すると簡単に解決しているように思えますが、探偵にとっては必死に対処した、過酷な時間でもあります。しかも、探偵たちで調査のために会議を行った時間は、これには入っていません。依頼者に負担のないよう真実を確保すべく、探偵たちは速やかな調査への努力を行っていることが伝わってきます。
体力の限界に挑んだ探偵のエピソード
2025/09/05
それは夫からの依頼を受けて、不倫の疑いがかかる妻を尾行中のことだった。当然のことながら、相手にバレないよう一定の距離を保ちながら、スマホなどをいじって普通の散歩を装いつつ歩くのが鉄則。時折、目の前の尾行対象者がふいに振り向くことがあるが、そんな時も慌てず騒がず、何事もないように、平然としていなければならないのだ。ところが、この日の尾行対象者である依頼者の妻は、そんな探偵のセオリーでは対応不能な女性だった。なんと、それまでの何の違和感もなく前向きに歩いていた彼女だったが、いきなり身体を反転させて後ろ向きに歩き始めたのだ。つまり後ろを向ける探偵に正対し、目線がばっちり合ってしまったのである。一体、何が起きたのか。探偵はとっさに理解できなかったものの、バレてはいけないというプロ意識から、食わぬ顔で彼女の横を足早に抜き去って、尾行を一旦中断し、遠巻きに観察してみた。すると、後ろ向き歩行を50メートルほど行ってはまた反転し、しばらく前向きの普通の歩き方をしていると、再び後ろ向き歩きに変わることを繰り返していた。つまり警戒から身体を反転したのではなさそうだった。探偵は不思議に感じたが、妻は夫の健康オタクで、今は「後ろ向き歩き健康法」にはまっているとの事だった。しかし、これでは尾行もやりにくい。夫に相談すると出た答えが……。「妻は熱しやすく冷めやすいタイプ。三日もすれば飽きて違う事やりだすから、二、三日、様子をみましょう」案の定、三日後に再び依頼者の妻を尾行したところ、後ろ向きに歩くことはしなくなっていたが、今度は本格的に運動に目覚めたらしく、ジャージ姿で現れ、急に走り出したのである。普段、冷静な探偵もこれには大慌て、彼女の後を走って追いかけた。さすが健康オタク、これまでにいろいろ実践してきただけあって、体力は抜群だった。スピードも本格派ランナー並みに速く、しかも、いつ立ち止まるのかと思うほど、延々と走り続けるのだ。妻を見失わないように、探偵も全速力で走らなければならず、体力的にかなりハードな調査となった。やがてどんどん調査対象者である妻との距離が離れていく。「もうダメだ!」と、息も絶え絶えとなりながら路上に突っ伏してしまう探偵であった。後日、走り始めた場所から、探偵がリタイヤした場所までの距離を測ってみたところ、約10キロだったが上り坂や急なカーブもあり、よくここまで走ったものだと同僚たちから褒められたという。さて、この体力自慢の妻の不倫調査に関しては、なにしろ飽きやすい性格の持ち主である浮気相手の男を捨てるのも電光石火の早業で、なかなか尻尾を掴めなかったが、なんとかその事実を突き止めることに成功。夫に報告すると、「飽きやすい性格ですからね、今は不倫のスリルを楽しんでいるのでしょう。しばらくしたら、別のスリルを求めていきますから、またその時にこれからのことを考えます。ただ、事実を確認しておきたかったんです」と、良く言えば夫は能天気な妻の天然ぶりを楽しんでいる節もあり、離婚はまだ先のような結果となった。ただし10キロも走った探偵は、体力が時には必要な状況があると学習し、現在、せっせとジムに通って肉体改造に取り組んでいる。